昆虫はそれぞれの環境に適応し、種の多様性が非常に高いことで知られている。翅の獲得は繁栄をもたらした重要な要因だが、その進化のメカニズムは未だ謎に包まれている。2つの対立する説が長い間論争を続けているのだ。一方は翅が全く新規に獲得されたとする説で、もう一方は既存の構造が変形して生じたとする説。これらの仮説は主に形態学に基づくが、段階的な進化過程を示す化石が発見されていないことなどが問題の解決を困難にしてきた。 今回、丹羽尚研究員(形態シグナル研究グループ、林茂生グループディレクター)らは、原始的な昆虫を用いて遺伝子レベルの解析を行い、翅の起源を説明する新たなモデルを示した。それによると、これまで対立概念と考えられていた2つの仮説を統合することで翅の進化を説明できるという。この研究は名古屋大学、信州大学、筑波大学、神戸大学との共同で行われ、Evolution and Development誌に