前回は睡眠時間も遺伝するという話をした。遺伝要因が強いことで知られる身長や知能などにはやや及ばないが、睡眠時間の長短もまたれっきとした体質の1つなのだ。ただし睡眠時間のすべてが遺伝子の支配下にあるわけではない。私たちの睡眠時間は、基本的な生命活動を営むために必要なコア部分(必要睡眠量)と生活習慣や環境に影響される可変部分の二重構造からなり、遺伝的影響が大きいのは必要睡眠量だとご説明した。 必要睡眠量は健康生活を維持するために欠かすことのできない睡眠の屋台骨であり、他の休養法では代償の効かない“譲れない眠り”である。睡眠不足の影響は甚大である。短期的には翌日の眠気や倦怠感、能率低下、交通事故などのヒューマンエラーの主要な原因となり、中長期的には生活習慣病やうつ病、認知症などのさまざまな疾病のリスクを高める。慢性的な睡眠不足は深刻な“現代病”と言えるのだ。 そのため、必要睡眠量の調節メカニズム
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