カート・ヴォネガットの代表作。過去・現在・未来にあまねく存在するようになった男の予言と陰謀がある一家を翻弄する話。ストーリーやディティールなんかは荒唐無稽なんですが、その馬鹿らしさを自ら人類への皮肉と冷笑によって茶化しています。全体的に筆圧が高くて合わない人にはきついかもしれませんが、ところどころかなり気合の入ったメタファーがありグッときます。凝った表現が好きな人なら楽しめるでしょう。 たとえばキリスト教の説教師が、人類がいかに罰当たりかを演説するシーンはこうです。 ボビー・デントンは、ぎらぎらと愛のこもったまなざしで聴衆を串刺しにし、それを彼ら自身の罪悪の炭火の上で丸焼きにしはじめた。 扇情的な説教が、群衆に罪深さを自覚させたということですが、翻訳とは思えない情感あふれる一文です。このウィットは評価したい。 ○○に踊らされているにすぎない 反面、人生のくだらなさ・目的のなさというテーマに
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