本書の表題は『盆踊り』。ここだけ見ると、夏ももう終わりだねぇなどと呟きたくもなる。しかし、副題を見落とさないで欲しい。「乱交の民俗学」と書かれてある。さらにオビには「<盆踊り>とは、生娘も人妻も乱舞する”乱交パーティ”だった!」の文字が。これはもはや、只事ではない。 コペルニクス的転回とは、このようなことを指すのだろう。あの夏の風物詩である盆踊りが、歴史的に紐解くと、乱交パーティだったなんて。本書は、それをさまざまな史料を掘り起こしながら再確認しようという試みの一冊である。著者は、風俗史家なる人物。一口に風俗といっても様々な意味があるわけだが、あんな意味やこんな意味の双方をおさえている両刀遣いである。 例えば、あの有名な「ええじゃないか運動」も、性的な要素を多分に孕むという。通常、歴史の授業で教わるような「ええじゃないか運動」の説明はこうなる 日本の江戸時代末期、東海道、畿内を中心に、江戸