2000万円は「不足」しているのか 「年金不安」に関する議論がにわかに注目されている。 本件は世上を賑わしている論点とは全く異なる意味で非常に不安が募るニュースである。新聞各紙では、 「人生100年時代、2000万円が不足」(日本経済新聞) 「人生100年 夫婦老後に2000万円 金融庁、資産形成促す」(東京新聞) といった見出しが躍り、テレビのニュース、ワイドショーでも連日取り上げられた。その後、麻生太郎財務相、さらには首相による火消しが続くが、政治もメディアもともにこの報告書の問題点を正しくとらえていない。 発端は、朝日新聞が5月23日に報じた 「人生100年時代の蓄えは? 年代別心構え、国が指針案」(朝日新聞) である。金融審議会市場ワーキンググループの報告書(案)1の公表をうけての報道であるが、個人的には、それほど大きなニュースとは認識していなかった。数十年にわたって議論されている