山梨リニア実験線の延伸工事が本格化した二〇〇九年。山梨県笛吹市内を残土を積んだ大型ダンプカーが次々と走り抜けた。 「ブロロロ」。午前八時半を過ぎると、ダンプの走行音が聞こえてくる。JR東海は「一分間に一台の間隔を置いて走らせる」と地元と約束していたが、数珠つなぎで来ることも。家の中にいても振動を感じた。 「静かな暮らしを求めて帰ってきたのに…」。残土の運搬ルート沿いに住む男性(61)は、工事開始の半年前、埼玉県からUターンしてきた。三年近く悩まされたダンプの音。「工事前にJRと納得いくまで話し合うべきだった」と悔やむ。