2019年末、中国・武漢で原因不明の肺炎の集団感染が確認された。 「武漢で初の死者」「新型コロナウイルス検出」「国内で初めて感染確認」……。年が明け、新聞の見出しは少しずつ大きくなった。それでも専門家は「過度に恐れる必要は無い」とし、日本で暮らす多くの人たちにとっては、対岸の火事と映っていた。 1月18日夜。氷雨が降り注ぐ東京・隅田川を進む屋形船で、約70人が食事やカラオケを楽しんでいた。後に参加者の新型コロナ感染が次々に判明し、東京都内で初めてのクラスター(感染者集団)とみなされることになるタクシー組合の新年会だった。 東京都は当初、屋形船と中国・武漢からのツアー客との「接点」を強調した。だが、小池百合子知事は3月の都議会で「屋形船が発生源でないことは明確」と発言した。当時、調査を担った保健所関係者は「都の勇み足のために、屋形船がクラスターの象徴のように扱われ、大変な迷惑をかけてしまった