スマトラ地震の震源とタイのプーケット島やピピ島のあるアンダマン海沿岸の間の距離は600キロ。地震があってから津波が到達するまでの時間は75分だった。 その75分間を歯ぎしりしながら見守るしかなかった一人の男がいる。タイ人の地震専門家サミス・ダマサロジュさんは地震の発生を知り、必ず津波がタイ南部の海岸を襲うに違いないと確信した。 彼はまず、気象庁長官に電話をかけたが、ずーっと通話中だった(実はそのとき気象庁長官は会議中だった)。気象庁にも電話してみたが、日曜なので誰もいなかった。 「地震は予知できないとしても、津波は予知できます」と彼は言う。タイの政府関係者や観光関係者がそんな基本的知識さえ知らないわけがない。 そして地震発生から75分後に、津波がアンダマン海沿岸に到達したのだ。ダマサロジュさんは、どれほど無念に思ったことだろう。筆者は、これほど歯がゆいシチュエーションをほかに想像できない。