Lesson532 不安に打ち勝つ文章 日本大地震の日、私はヘタレだった。 「日本大地震」というのは、 私が勝手に名付けているだけだが、 東北だ、関東だ、と言われてもなにか違う。 東日本と言われてもしっくりしない。 直撃されたのは日本である。 問われているのは日本そのものだ。 歴史的に見ても、世界的に見ても、 日本に二度とこんな地震が来ないでという祈りもこめて、 私には「日本大地震」がいちばんしっくりくる。 「ひとり」が身にしみた時間だった。 東京で2度目のおおきな揺れがあったとき、 岡山の家族からメールがきた。 返信が打てない。 自分では意外に冷静だと思っていた。 指も震えていない。なのに、 ひとつのまとまりをもった文章を書き、 メールを送るという一連の動作ができない。 非常用の荷づくりができない。 これまたネットで冷静に、 阪神大震災の経験者の声を調べるも、 いざ、荷造りするとなると、