川端裕人さんは、科学をテーマにして小説とノンフィクションを両方手がける文筆家。今回は、最新作『青い海の宇宙港』春夏篇、秋冬篇の2冊が発売されたばかりの川端さんへのインタビュー後編です。サイエンスの現場を描くことの困難とは何か──。 原子核工学を目指した頃 川端裕人は1964年、兵庫県明石市に生まれた。明石海峡大橋はまだなく、海峡をへだてて目と鼻の先に淡路島が見えた。家のそばには小川や田んぼがあり、明石城や日本標準時を刻む明石天文台によく通った。父親はエンジニアで、母親も自然やサイエンスに興味があったわけではない。野に放たれた子どもだった、と川端は回想する。 『青い海の宇宙港』の主人公、天羽駆は、「マングローブって、木の名前じゃないんです」「海に近い水に浸かるようなところにできる林のことで、木の種類はいろいろあるそうです」と、教師の発言を訂正するようなクラス一のいきもの博士として描かれている