戦地の兵士を支えるものはなにか。食糧、水、医薬品、安全な寝床。そうした物の他に、なによりも書物が精神の糧として必要だと米国は考え、第2次世界大戦中の戦勝運動の一環として、「兵隊文庫」を創刊し、本を戦地に送り続けた。表現力と想像力は人間の尊厳の礎だ。かつての強制収容所や刑務所は、まず収容者から読み書きの手段を奪った。人間にとって最も大事な知的活動を封鎖され、生きる気力が失われていく。アウシュヴィ
中核となるテーマはAIによる人間性の再現。その題名が示すように、ジャズが題材としてさまざまに扱われている。これがきわめて重要。物語の味つけにとどまらず、この作品の本質につながっている。 舞台は二十一世紀末、デジタル技術は高度に発展し、将棋や囲碁などのゲームで圧倒的な強さを発揮するソフトウエア、小説やドラマの自動生成、有名なミュージシャンのスタイルをコピーした機械演奏などはもはやあたりまえだ。しかし、人間にできることはすべてAIで再現できるとは、まだ言いきれない。一般的な知性を試すチューリングテストはたやすくパスするとしても、リアルな環境のなかで発揮される個性はどうだろうか? 何十分の一秒で微妙に動く表情、相手しだいでの変わる立ちふるまい、あうんの呼吸。具体的にいうとジャズの即興演奏だったり、話芸の達人どうしのかけあいだったり、プロ棋士の盤面外でのすべての所作だったり。 主人公のフォギーこと
2016年の「本屋大賞」第1位に選ばれた宮下奈都さんの『羊と鋼の森』は、静謐で美しい文章と、調律師として理想の音を追い求める主人公の青年の姿に、共感の輪が広がりました。その結果、2016年上半期の小説ベストセラー第1位に。 読者の方は、この作品のどこに感動したのでしょうか。『羊と鋼の森』で最も好きな一文(80字以内)を募集したところ、多くの投稿をいただきました。 文庫になりました! 『羊と鋼の森』(宮下奈都 著) 音を言葉で表現する 文章の美しさが読者の心を捉えた 最も多くの方が選んだのは、次の一文です。 森の匂いがした。秋の、夜に近い時間の森。風が木々を揺らし、ざわざわと葉の鳴る音がする。夜になりかける時間の、森の匂い。(P.3) 「冒頭のこの一文を読みながら、すぅっと息を吸い込みました。匂いの確定の設定が冒頭から書かれてあったところが、他にはない作品だなと思ったから」(大阪府 36歳
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く