ひかり埃のきみ 美術と回文 SELECTION FROM THE ESSENTIAL WORKS OF NAOYO FUKUDA 著者:福田 尚代 出版社:平凡社 ジャンル:芸術・アート ひかり埃のきみ―美術と回文 [著]福田尚代 子どもは誰も本好きだ。物体としての本を、そこで繰り広げられるお話を愛して止(や)まないが、成長するにつれて内容を読解するという客観的な態度に変わる。 だがここに、幼少期の本への偏愛を驚くべき情熱で保ちつづける人がいる。物語を超え、言葉の意味を超え、文字が物象となる地点へと歩きつづける。肩書は「美術家」だが、その行為は明らかに従来の美術にはなかったものだ。 あるとき「はじまりからも終わりからも読むことのできる言葉」にとり憑(つ)かれ、書き出したら止まらなくなった。「罪の血は蜂の蜜」のような短いのもあれば、一ページを埋める長いものもある。それがひらがなに書き下されて