『脱住宅「小さな経済圏」を設計する』(山本理顕・仲俊治 著) 建築が社会の鏡であれば、その建築を設計する建築家の責任は大きい。山本理顕は社会に対する責任を痛感しながら新しい建築の姿を模索し続ける、戦う建築家である。 『脱住宅』と題されたこの本は、山本と事務所の元所員であり、共同研究者でもある仲俊治によるマニフェストである。経験豊富な山本の実践を紹介する「試行」と、仲のつくった《食堂付きアパート》を中心に具体的な脱住宅のカタチを示した「提案」という二部構成になっている。挑発的なタイトルだが、二人が一貫しているのは、社会全体がごくごく当たり前のように信じている「一住宅=一家族」という、そもそもの前提を疑うことだ。 都市で働いて、家に帰ってきたら家族と食事をして寝るための住宅という常識。庭付き一軒家というアメリカンドリームは、今でも有効なのだろうか。少子高齢化が進み、ジェンダーによる家族の在り方