利他性こそ社会を再生 日本が抱える多様な論点=難点を、全部まとめてひとりで論じ尽くしてしまおうという本。めまいがするほど明快で鋭く、熱い。紙からシューシュー湯気が出て危ないくらいだ。 宮台氏は特殊なスコープを持っている。これは倍率ではなく「抽象度」を自由自在に変えられるのだ。たとえば教育問題や経済問題の事実関係を述べているとき急に話の抽象度をグイと上げる。すると今までの話が驚くほど明確に俯瞰(ふかん)できる。で、次はまたもう少し抽象度を上げてみる……。この操作が絶妙だから、急勾配(こうばい)のジェットコースターに乗っているようでスリリングだ。若者に人気のある所以(ゆえん)である。 「すべての境界線は恣意(しい)的につくられたものだ」というポストモダン的な世界観を終わらせ、その恣意性を熟知しつつも価値や現実に関与せよ、というのが基本的な立場。こっちにもあっちにも確固たる根拠はないことを知りつ