作品が出るたびに世界の文学賞をとり、「いずれはノーベル賞」の呼び声が高いナイジェリア出身の作家がいる。 チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ。 恋愛小説の中に、ポストコロニアル、移民、ジェンダーなどの現実を、鋭い観察眼とリアルな描写、ときに皮肉とユーモアを交えた筆致で描き出す。 「物語の力で、使い古された『フェミニズム』や『アフリカ』という言葉に息吹を吹き込んだ。これはイズム(主義、概念)ではできないことです」 アディーチェ作品の邦訳をすべて手がけてきた、翻訳家のくぼたのぞみさんは言う。 物語の持つ力とはなにか。本に描かれた場面などをもとに、読み解いてもらった。 チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ(Chimamanda Ngozi Adichie)(写真左、くぼたのぞみさん提供) 1977年、ナイジェリアに生まれ、19歳でアメリカに留学。03年にO・ヘンリー賞を受賞後、初の長編小説『パープル