夏の感情の機微が蘇る さくらももこ『ちびまる子ちゃん』 30年近く日曜の夕方に君臨し続ける国民的作品であって、紹介も何もないわけですが、原作コミックスの持つおもしろさは、今なお鮮烈だ。とりわけオススメしたいのは、はまじ、ブー太郎、永沢、藤木、山田、小杉、山根、野口さんといったアニメでお馴染みのキャラクター達が頭角を現す以前の、りぼんマスコットコミックス1巻から7巻あたり。作者の実体験が濃く物語に反映されたエッセイ色の強い時期のエピソード群である。 絵は簡素で稚拙なのだが、キャラクターの表情や仕草に、センスとしか呼びようのない奇妙な巧さがあって目を引き付ける。そして、驚くのはその文字量の多さだ。吹き出しの台詞のみならず、作者のツッコミで、コマの隅々まで言葉が敷き詰められている。この言葉のおもしろさが初期『ちびまる子ちゃん』の何よりの魅力だろう。さくらももこの文体がその後のエッセイ文化に与えた