なにも考えたくない時、私はアイロンをかける。 まずスイッチをいれて、温まるまでの間に衣類を集める。ハンガーに吊るした家族のシャツ、ハンカチ、それぞれ数枚。他にもないかと探すけれど、だいたいいつもこんなもの。会社を辞めてから、自分のシャツというものはほとんどなくなった。 スチームがしゅんしゅんしてきたら、台に一枚ずつそれらを広げてアイロンを滑らせていく。アイロンが通ったあとの布が四隅までぴしっと平らなのをみると、心がすっとする。ハンカチの上半分をかけて、まだシワが残っている下半分と比べて、はいこんなにぴしっとなりましたねと思うのも好き。 シャツは、いつも難しい。襟、前身ごろ、後ろ身ごろ、袖、最後にもう一回襟。シワがとれやすいシャツと、とれにくいシャツがある。急いでいる時はつい後回しにするけれど、無心になりたい時に、シワのとれにくいシャツほど相性のよいものはない。きりふきも使って、根気よく向き

