職場の後輩女子にいいところを見せたくて高級割烹を予約したのに、畳に上がる段階になって、靴下に穴が空いていることに気がついた。 同僚たちとふざけて壁ドン選手権をしていたら足がすべり、誤って自販機に手をついてしまい、非常ベルかと思うほど強烈な「ビーーーーーーーーー」という音を職場に鳴り響かせた。 男子高校生か、と突っ込みたくなるくらい下らない、しかしいかにも修二らしい日常の話題をいくつか提供すると、アキは手を叩いてゲラゲラと大喜びをする。それこそ、涙を流さんばかりに。 「ホント、修二は変わらないね」 「ええ、二十八年間、まったく変わり映えのしない男ですわ」 そういう自分も、二十八年間、未だに修二の隣の家で暮らし続けている。音大の声楽科を卒業してから、母校の高校で音楽を教えるようになってはや六年。覚えたのは化粧とそれなりの服の選び方、酒の味、そして寂しさとか切なさとか、そんなような感情をないもの

