破壊と殺戮の二〇世紀の百年の中でも殊更異彩を放つのが1975~79年のカンボジアを支配したポル・ポト体制であった。人口八〇〇万人の国家で、約一五〇万人から二〇〇万人が殺され、全ての国民が農地へと送られ、貨幣と市場が否定され、宗教、文学、音楽、ありとあらゆる文化が弾圧され、行政機構が解体され、多くの建造物や社会インフラが破壊された。未だ謎の多いポル・ポトによる革命を整理した一冊。 ポル・ポトとクメール・ルージュ統治下のことについてはわからないことが多い。証拠となる資料があまり残っていないこと、クメール・ルージュ時代の真相解明が政争の道具となりがちなこと、事件を総括する裁判がその後の政治状況もあってなかなか開かれず、開始されたのが2007年とかなり間が空いたこと、当事者の多くが老齢で認知症となった者もいて証言を得にくくなっていること、そしてポル・ポト一人にその責をかぶせて真実に蓋をしてしまう傾