ジープを改造した小さな消防自動車が活躍する『しょうぼうじどうしゃ じぷた』、特急電車から急行、そしてローカル線へと乗り継ぐ旅を描いた『しゅっぱつ しんこう!』・・・・・・。乗り物をテーマとした数多くの絵本を手がけ、「乗り物絵本の第一人者」といわれた故・山本忠敬(やまもと・ただよし)さん(1916~2003)の作品だ。 だが、山本さんの作品のうち、名作と称えられつつも長らく再刊されず「幻の作品」となっていた絵本がある。いまから38年前、1978(昭和53)年に刊行された『でんしゃがはしる』だ。山手線の電車が都心を一周する様子を描いたこの絵本が、山本さんの生誕100周年となる今年の2月、ついに復刊された。 その復刊を支えたのは、絵本に情熱を持つ編集者はもちろんのこと、幼少期に『でんしゃがはしる』をはじめとする山本さんの絵本を読んで鉄道に憧れ、そして夢を叶えた現役の鉄道関係者たちだった。 黄緑の