高橋由伸が巨人からの監督就任要請を受諾したようだ。プロ野球の監督は、日本で12人分しかない貴重なポストだ。その職に乞われて就くことは、とてもおめでたいことだ。現役からそのまま監督に就任するのは、巨人ではあの長嶋茂雄以来だ。 前回の東京オリンピックより前に生まれたぼくには、長嶋茂雄引退は鮮明だ。「あの日」は、ウィークデイのデイゲームでのダブルヘッダーだった。少しでも早くテレビ中継を見たかったぼくは、放課後学校から最も近い友人宅で正座して、最後の打席を、試合後のスピーチを食い入るように見た。 ぼくは泣いた。いや、球場の観客もテレビの前のファンも、多くの日本人がその日涙を流した。でも、この涙はとてもビミョウなものだった。大スターの長嶋茂雄が引退することは間違いなく哀しいことだったのだけれど、一方でヒーローとの別れに涙すること自体に、多くの日本人が陶酔していた。 長嶋の引退と監督就任がいつ決まった