トントントン、と包丁の音。 やさしい緑のタイルが主役の キッチンでは、今日も今日とて リズミカルな音が響いている。 僕より帰宅が早い彼のほうが いつのまにか料理担当になったから、 自然と掃除は僕の担当になった。 料理の音がしているあいだに、 ゴシゴシとトイレやお風呂を磨いている。 プロパンガス用の2くちコンロは、 だいたいどちらも使われている。 片方で汁物、片方でメイン料理が 作られていることが多い気がする。 光が差し込むキッチンでは、 豆苗やにんじんの切れ端が すくすくと元気に成長中。 玄関側の出窓でも、 なにかしらの野菜が育っていたり 野菜の皮が干してあったりする。 一緒に暮らし始めたころは 丁寧な生活だなぁと思ったけど、 どうやらそういうわけでもなさそう。 どうやら彼はただつつましく、 お得に暮らしたいだけのようだ。 「お買い得」という言葉に弱い。 たまにいろいろ買いたくなって、 ど