わたしはとても身軽だから、 階段だってなんのその。 トントンとリズミカルに 上へ下へと移動する。 そんなわたしを見て、 あの人はやさしそうに いつも目を細める。 上にいても、下にいても、 どこにいてもわたしの自由。 「猫は気まぐれだからなぁ」と、 このまえあの人が言っていた。 どうやらわたしは猫らしい。 あの人は毎日扉の向こうに 消えて、そして戻ってくる。 扉の向こうが気になるけれど、 あの人が柵をつけてしまった。 「外に飛び出さないように」と わたしを撫でるあの人の手。 まぁ、いいか。 あの扉の向こうに もちろん興味はあるけれど、 この手のひらは気持ちいい。 それでよしとしてあげる。 あの人がいないうちに いつもおいしいものを 探そうとするけれど、 まだうまくいったことはない。 あの人がキッチンと呼ぶ あそこらへんに、 きっとある気がするのに。 仕方がないから、 あの人がキッチンで ごそ