――――借り物であったとしても、それは理想だった。 歪な夢だとわかってはいた。 無謀な路だと識ってもいた。 砕かれることを覚悟していた。 それが幻想であることを理解しても立ち止まることなく、死してなおその幻を追い続けた。 ただ、この身は救えた人の笑顔のみを望み、数多く浴びせられた罵倒にもそれのために耐え続けた。 全ては己が理想の為、だった。 しかしいつしか理想は擦り減り、幻想としての価値もそこにはなくなった。 歩んで来た路を振り返ればそこには砕けた剣と屍の平野しか認められず、往く先を見れば地平まで続く剣の丘と戦場しかなくなっていた。 摩耗しきった理想を手に、再度舞い戻った遠い記憶に残った戦場。そこで己を消すことを誓った。それほどまでに疲弊している自分がいた。 彼女らは知らぬ再開。かつての戦友が、姉が、妹が、家族が居た。―――そして、彼女も。 繰り返される戦争、その最中に悲願の時がやってきた