Back Index Next 「パリからひとりで来たんなんて、すごいね」 長い髪をひとつにまとめた若い女性は、モーリスと同じようにひとりで、この星の巡礼路をバイクで走りとおしたひとでした。やはり絵を描くひとでしたので、モーリスは自分の箱を見せて、そこに訪れた街のことなどを描いてもらいたいと思いました。 「それは光栄だわ。でも、その前に旅の話しを聞かせてくれないと」 彼女はかわいらしいえくぼを見せて、モーリスにも葡萄酒をついでくれました。 モーリスはこわごわとグラスを傾け、ちろりと舌で舐めました。思ったより、苦くはありません。美味しいとまでは思いませんでしたが、葡萄ジュースとそれほど変わらないように感じました。ちょうしに乗って、そのままゴクリゴクリとのどを鳴らして飲み込みました。先ほどと違い、今度はすこし、身体がぽかぽかして雲の上に浮かぶようないい気分になりました。彼女はいたずらっこのよう