ヒトの身体は約30兆個もの細胞で構成されている。心臓、神経、皮膚などそれぞれの細胞は形や大きさ、働きなどが大きく異なるが、元をたどれば、受精卵というたった1個の細胞に行き着く。すべての細胞は実は同じゲノム(遺伝情報)をもっているのだ。 ではなぜ、同じゲノムであるにもかかわらず、異なる細胞に分化するのか。それはゲノムに含まれる全ての遺伝子のうち、細胞ごとに働いている遺伝子の種類や量が異なるからだ。細胞は遺伝子のオン・オフを制御し、必要な遺伝子を、必要なときに、必要なだけ働かせているのである。この遺伝子のオン・オフを制御するしくみのひとつを「エピゲノム」という。エピ(epi)は「後から・付加された」という意味で、ゲノムに加わる情報のことをエピゲノムと呼ぶ。そして、このエピゲノムを制御するメカニズムの解明に取り組んでいるのが、木村宏教授だ。 ゲノムを担うのは、「DNA(デオキシリボ核酸)」と呼ば
