誰かの人生を支えるために自分の人生を犠牲にすることを、美しいと思う人もいるけれど、自分がやれと言われたらいやがる人が大半なんじゃないかと思う。そこに愛があればいいとか思っていても、いつまでたっても成功しないバンドマンを食わせてる彼女さんというありふれた構図にすら、僕らはちょっとした抵抗を感じる。なぜだろう。おそらくそれは、彼女さんに、彼を食わせることをやめたり、他の男を選んだりする自由意志があるはずだという、言い換えれば、彼女さんにも他の人生があるはずだという僕らの思いに由来する感情だ。 しかしまあ、実際にそういう人に接してみると、よく言えば健気、少し悪く言えば好きでやってるんじゃん、という人が多い。だから、心配しないで、なんてことも言う。そういう人たちの中には、自分の能力に限界を感じている人が少なからずいて、自分はいいから、誰かの夢を叶えることが自分の夢だなんて思っていたりもする。 こう