→紀伊國屋書店で購入 丸谷才一はすぐれた入門書は「偉い学者の書いた薄い本」、読む価値がないのは「偉くない学者の書いた厚い本」だと書いた。これは至言であるが、「偉い学者の書いた薄い本」の例としてあげられているのは荻生徂徠の『経子史要覧』とコーンフォードの『ソクラテス以前以後』だけだった。漢学と哲学についてはこの二著で間違いないが、それ以外の分野はどうなのか。数ある入門書の中から「偉い学者の書いた薄い本」を選び出した本がないものか。 かねがねそう思っていたところ、匿名書評家<狐>こと山村修が本書を書いてくれた。日本語、文学、歴史、思想史、美術史という五つの分野について、夫々五冊の「偉い学者の書いた薄い本」を推薦し、詳しい紹介をつけてくれた。最近の本もあるが、多くは山村が何十年も手元におき、折にふれて読みかえしてきた本だけに、紹介は実にゆきとどいていて、すべての本を読みたくなった。「偉い学者」だ