蔡英文の覚悟 中華民国(台湾)の総統府は、日本植民地期の20世紀初頭に建てられた、広大で荘厳な建物をそのまま用いている。この事実は、中国共産党の好戦的な挑発にもかかわらず、ゆうに100年以上の間、台湾がその支配下に置かれていないという事実を思い起こさせる。 2022年9月、私は蔡英文(ツァイ・インウェン)総統にインタビューするためそこを訪れた。エントランスから高くそびえる中央塔は、中国による侵攻の際、格好の標的となりそうだと私は思った。 2022年で在任6年目となる蔡英文は、台湾初の女性総統である。私たちは、ランの花と大きな振り子時計のある、広々とした部屋で面会した。蔡は多くの側近を従えて入室してきた。その多くは男性である。蔡は、はつらつとしてフレンドリーであり、それでいて事務的であった。私たちが向かい合ってアームチェアに腰かけた間、雑談はほとんどなかった。蔡は控えめながらも自信に満ちてい