給食のときは机を向かい合わせに移動させる。席順は成績の順で、だから彼の周囲は首位グループだった。ずいぶんと露骨なシステムで、でも十四歳の彼がそれを気にしたことはなかった。マキノ私立はどこ受けんの。彼の隣の高木が言う。高木は誰とでも話す。女子が相手だって平気だ。可愛くても、可愛くなくても。マキノはそのどちらでもない。陸上部で無愛想で長い丈夫な棒っきれみたいだった。 受けないよとマキノはこたえる。皿は隅々まで空いている。なんでと高木が訊くとマキノは牛乳を開封しながら、お金、ない、とこたえた。落ちたらどうすんの、と高木は訊く。どうしようとマキノは答えて牛乳を飲んでいる。彼は少しだけ彼女に対する印象を向上させる。高木が彼を見るので秘密と彼は言う。それから高木をなだめるために続ける。知ったらきっとびっくりするよ。だから待ってな。 高木と仲良くなったきっかけは「ダービー」だった。定期テストは教科ごとに
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