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2016年12月1日のブックマーク (2件)

  • プラスティックフィルムの仮面と散らかった目鼻 - 傘をひらいて、空を

    こんな美人が職場にいたら大変でしょうと、隣のテーブルの知らない男が言った。下卑た声だった。私たちはどちらからともなく黙ってそれぞれの手元のグラスを引き寄せた。その中身だけがこの世で唯一の自分たちの味方であるかのように。 うまくあしらう女の声と、それをまたうまくあしらう複数の声が聞こえて、それから、そうですねえ履歴書の写真みたときはそう思いましたねえと、ひときわ大きな別の男の声が耳に入ってきた。美人が来るんだと思ってうれしかったなあ、でもまああれですよね、しゃべっちゃうとこのひと美人が台無しだし、一緒に働いてたらどうでもよくなっちゃうじゃないですかそんなの。 私はほっと肩の力を抜いた。それから話題にされている女をちらりと盗み見た。痛々しいほど若くて、かなしいくらいきれいな顔立ちをした女だった。よく訓練された筋肉でもって目を三日月のかたちに整え、適切な角度で桜色のくちびるを引き上げていた。まぶ

    プラスティックフィルムの仮面と散らかった目鼻 - 傘をひらいて、空を
  • 着道楽とリョウシンノカシャク - 傘をひらいて、空を

    いいですね先輩はいつも、と彼女は言う。係数は少し高いねと私はこたえる。彼女は鼻歌まじりにインスタントの味噌汁をかきまわし(相対性理論の『Loveずっきゅん』)、小さいスプーンをぺろりとなめてからその場で洗った。この後輩は器を使い終えてすぐ洗浄する。子だくさんの昔ながらの熟練の主婦みたいに。まだ二十三のひとり暮らしの女の子なのに。 私たちは給湯スペースを出る。彼女は私の足を見て話す。係数っていいですね、でも収入から算出するとあんまりおもしろい数値じゃないかもしれないです、相当小さくできる支出じゃないですか、だから支出の割合から出したほうがいいと思います係数。 私は席に着いてカップ春雨に息を吹きつけ、コンビニエンスストアの巻き寿司のパッケージの精巧さに何度でも感心しながら剥がして、あなたは何係数が高いの、と訊く。彼女の趣味節約だ。 彼女は持参したおにぎりと小さいプラスティックの容器

    着道楽とリョウシンノカシャク - 傘をひらいて、空を