飽きず、悟らず、性懲りもなく。 寄り道、遠回り、迷い道。 名はなく、口の端にのぼらず、売れもせず。 それでも、私は小さな説を紡ぐ。 媚びるな。 毒気を持て。 リリシズムは枯れていないか。 ユーモアの尻尾をつかめ。 白い紙に、青いインクで言葉を埋める。 苦吟と呻吟、その果ての苦笑。 なんのために、だれのために。 身の内に棲む、果てなき渇望――。 こいつに突き動かされ、時には手を焼きながら。 私は、今日も小さな説を書く。 令和四年(二〇二二) 春 作家 増田晶文(ますだ・まさふみ) 楠木正成 河内熱風録 「河内の土くれから生まれ、大和川の水を呑んで大きなった。 わしが河内の総大将、楠木正成や!」 新しい世の中を河内から――。 楠木正成は1000人に満たない寡兵で、巨万の鎌倉北条軍と対峙する。 「土ン侍」を自認し、河内の地と民、配下の一党、さらに妻と息子たちをこよなく愛した猛将。 奇想天外な