Contents トップ アバウト 文章 リンク Notice 2005.11.20 トップ更新 Mail 空メールでもOKです。 蝶のいる廃墟 / 2005.11.25 1. 「都会にね、すっごく綺麗な蝶々が、それはもう数え切れないくらいたくさん舞うんだ。そこらに建っているビルは一つ残らず廃墟になって、ひび割れた壁からいろんな草や花が生えてくる。建物が立体的なお花畑を作るんだ。花の蜜で蝶々はどんどん増えて、そのおかげで植物の種も拡散される。すごく、すっごく綺麗なんだよ」 トオルの鼓動はすでに誰の目にも明らかなくらい弱々しくて、それでもトオルは僕をまっすぐ見つめて、最後まで言ってしまう。 「カオルも、早くおいでよ、こっちの世界が蝶々と植物で埋め尽くされたころには、どうせ僕たちは、もういないんだから──」 2. トオルがこうして静かに目を閉じてから二十年が経っ