論文「D.W.Winnicott's Analysis of Masud Khan : A Preliminary Study of Failures of Object Usage」を読んだ。Contemporary Psychoanalysis, 34(1998): 5-47に掲載されたもの。 著者Hopkinsは、フィラデルフィア在住の分析家。攻撃性に関するウィニコットの理論と臨床が乖離していたことを資料を通じて明らかにし、その乖離がうまれた所以について考察した論文だ。 Hopkinsがこの批判的論考の基礎に据えているのは、ウィニコットの晩年の論文『対象の使用と同一視を通して関係すること』だ。彼の代表的な著作の一つ『遊ぶことと現実』に掲載されている、有名なこの論文の主張をまずまとめておく。 ウィニコットによれば発達初期の赤ん坊は、まず「対象と関係しているobject-relating