ある友人にこう言われたことがある。 「歌舞伎町って、でっかい伊勢佐木町みたいだよね」 その猥雑さも人通りの多さも大分スケールダウンするが、確かに伊勢佐木町は「ちっこい歌舞伎町」のようでもある。 一時期は、かつて“伊勢ブラ”などという言葉が流行したのがウソのように閑散としていた頃もあったが、それもカレー博物館などのおかげで、かつての賑わいを取り戻しつつあるかのようにも見える。 今では国民的人気を誇る、とある“フォークデュオ”が、アマチュア時代によく演奏をしていたのが、同じ伊勢佐木町は松坂屋の前である。それに肖ってか、弾き語りの聖地と化した松坂屋前には、閉店後にフォークギターをかき鳴らす若者の姿をよく見かけるのである。私はそこに、歌舞伎町には決してない、スケール云々ではない、稚拙に感動を強要する傲慢さに、ある種の熱や、ある種の猥雑さを感じていた。 彼を見掛けたのは、まさにその松坂屋前だった。夜