この記事をお読みの方の多くは「日本」に住んでいるか、もしくは「日本」に興味があるか、すくなくとも「日本」語で書かれたものを読む能力がある方のはずです。 その「日本」は、いつから「日本」なのでしょうか。かつてこの国は、『魏志』“倭”人伝にみられるように、「倭」という名前でした。「倭」から「日本」に変わったのはいつからか、なぜ変わったのかを考えてみたいと思います。 植田麦 明治大学政治経済学部専任講師。研究の専門は古代を中心とした日本文学と日本語学。 関連記事:「日本」が英語で「ジャパン」になった由来は? 歴史書のヤマト 国語の教科書の付録に「文学史年表」がついていることがあります。その一番端にあるのが、おそらく『古事記』と『日本書紀』です。『古事記』は712年、『日本書紀』は720年と、ほぼ同時期にできた書物です。多くの方がご存じのとおり、この2種の書物はいずれも、日本の神話と歴史を書き記し