盗賊のインド史―帝国・国家・無法者 [著]竹中千春[評者]中島岳志(北海道大学准教授・南アジア地域研究、政治思想史)[掲載]2011年1月23日著者:竹中 千春 出版社:有志舎 価格:¥ 2,730 ■近代国家の本質を逆照射する 『女盗賊プーラン』という本を覚えているだろうか。1997年に日本語訳が出版されると、現代インド女性の自伝としては異例のロングセラーとなり、話題となった。 プーラン・デーヴィーは、幼児婚・年上の夫からの暴力を経た上、誘拐される。犯人は盗賊団の首領。彼女は強姦(ごうかん)され、愛人とされた。しかし、盗賊団の一員が彼女に思いを寄せ、首領を殺害。彼女を連れて逃げ出す。そして別の盗賊団を形成すると、彼女自身がリーダーとして君臨するようになる。 本書はプーランに象徴されるインドの「盗賊」に注目し、武装化する「周縁化された人々」を追う。そして、その社会的位置づけの歴史的変化を