寒さがこれほど人を惨めな気分にさせるのだと、その日初めて知った。寒空のなか、かじかんだ指先はものに触れる感触もよくわからなくなっていた。 大晦日の夜、私は全財産たったの1000円で正月が明けるまで生き延びなければならなくなった。 当時、私は自動改札機も設置されていないような田舎から出てきたばかりの大学生だった。入学のために上京してきた私にとって、日常生活は知らないことだらけだった。はじめての大学生活。はじめての一人暮らし。そしてはじめての東京で迎える大晦日。毎日が楽しくて、楽しくて、地元に帰省する気なんてさらさら起きなかった。 目にうつる全てが新しいものだらけで、私は毎日浮かれていた。若さゆえの無敵感があった。とりあえずなんとかなると思っていたし、実際なんとかなっていた。その日、大晦日もそうだと思い続けていた。 だがその大晦日は違った。 当時の私は全くの無知だった。生きるために必要な最低限