本書は冒頭、LHCにおけるヒッグス粒子の発見の描写から始まる。素粒子物理学の標準模型が完成した瞬間である。人類がペンと頭脳だけで導き出したモデルを、自然界も採用していたことが明らかになった。本書の言葉を拝借するなら「人類、やるじゃない!」。以後、本書では標準模型に則りながら、「強い力」と「弱い力」、そしてヒッグス粒子に至るまでの研究進展と研究背景を解説していく。 著者が「標準模型は、40名以上のノーベル賞受賞者を含む数多くの物理学者たちが、さまざまなアイデアを出し合って作り上げたものです。何か辻褄の合わないことが見つかるたびに別の理論を継ぎ接ぎして、苦労して織り上げたパッチワークのようなものです。」と書いているように、素粒子の標準模型はとても複雑で、個々の現象を記述する複数の理論の組み合わせによって、出来上がっている。複雑さは上の図を見ても分かるだろう。 ただ、本書は実によく配慮してあって