被抑圧者の伝統は、ぼくらがそのなかに生きている「非常事態」が、非常ならぬ通常の状態であることを教える。ぼくらはこれに応じた歴史概念を形成せねばならない。このばあい、真の非常事態を招きよせることが、ぼくらの目前の課題となる。それができれば、ぼくらの反ファシズム闘争の陣地は、強化されるだろう。ファシズムにすくなからずチャンスをあたえているのは、ファシズム対抗者たちが、歴史の規則としての進歩の名において、ファシズムに対抗していることなのだ。ーぼくらが経験しているものごとが20世紀でも「まだ」可能なのか、といったおどろきは、なんら哲学的では<ない>。それは認識の発端となるおどろきではない。もしそれが、そんなおどろきを生みだすような歴史像は支持できぬ、という認識のきっかけとなるのでないならば。 わたしの翼は飛びたつ用意ができている、 わたしは帰れれば帰りたい、 たとえ生涯のあいだ、ここにいようと わ