作家の円城塔さんが想像する、2036年の「ワークプレイス」を全7回(短編小説4本+対談記事3本)にわたって紹介。短編小説の【プロローグ】となる本記事。情報化社会の夢が覚めた未来に待っていたのは、「狂乱」か、それとも「楽園」か。 情報化 インターネットの時代は苦しかったという記憶がある。それが情報化の夢を語る時代であったからかも知れない。楽園への一本道という夢を。 この頃、ギャッツビーのことを考えるようになった。いや、ジャズ・エイジを。正確には狂乱の1920年代を。 不況からの回復と、大量生産の実現。「それまでにも存在していたが、一般には届いていなかった商品」の流通。自動車、映画、ラジオ。電気・水道、道路網といったインフラの整備が進み、摩天楼が伸び、大都市化が加速した。 人間、文字を読めたからといって、そこに何が書いてあるかを理解できるとは限らない。たとえ言葉を知っていたって。 どうにも、『