2019年10月12日、静岡県伊豆半島に上陸した「令和元年台風19号」は、関東・信越・東北地方を中心に甚大な被害をもたらした。 【河川敷の貯水能力が発揮された荒川本流】 千曲川(信濃川)流域では、JR北陸新幹線の長野新幹線車両センターが浸水、上田電鉄別所線の信濃川橋梁(きょうりょう)の一部が流出。さらに久慈川流域の水郡線でも複数の橋梁が流出するなど、多くの鉄道にも被害が生じた。しかし、首都圏を流れる二つの大河・利根川と荒川流域での被害は限定的で、都心部周辺の鉄道に地下鉄の水没など大きな混乱をもたらすことは避けられた。そこには上流部のダムと遊水地による多大な防災効果があった。 * * * ■カスリーン台風の被害により治水ダム群を建設 利根川は関東地方の一都五県(ほか支川<しせん>の一部は長野県)を流れ、信濃川に次ぐ日本第2位の全長322キロ、流域面積では最大の1万6840平方キロをもつ。