戦争と広告 [著]馬場マコト[掲載]2010年10月24日[評者]四ノ原恒憲(本社編集委員)■戦意昂揚へ、なぜのめり込んだか 我々の生活は、広告に、日々浸されている。商品に限らない。選挙だって、いわばプロの手が入った“広告合戦”だ。 でも、その程度なら個人の判断で、無視もできるが、恐ろしいのは、「戦争」と結びついた場合だ。その正当性を訴え、人々を戦場に送り、結果、多くの死が残る。だが、戦時下、最も強力で資金も潤沢な国という広告主の発注に、広告人は抗(あらが)えるのか。本書は、資生堂を中心に、戦前、戦後を通じて、日本のグラフィックデザイン界をリードした山名文夫(やまな・あやお)の生涯を追いながら、この問題に迫る。 昭和初期からモダンで繊細な才能を開花させた山名。が、戦線が拡大し、ほとんどの商品が配給制に変わり、企業内で広告の腕を振るう場がなくなる。 一方、国は、世論を「聖戦」に向けて“健全”