「死の舞踏」(註)という、この西欧人の精神に根深く浸透したイメージを正確に捉えるには、キリスト教的世界観の原基と、少なくとも中世以降現代に至るまでのその変遷の過程を理解することから始めなければならないことは言うまでもないだろう。とはいえそれは、この一編の雑稿で賄いきれるほど単純な問題ではない。しかしそこを敢えてまげて、本稿の展開のために極く単純な概観の把握だけを試みるならば、「死の舞踏」とは、ペストの蔓延による大量 の人間の死という中世末期のヨーロッパ全土が直面した大惨事をその誕生の契機とし、その後の宗教改革、市民革命、数次にわたる産業革命、それに伴う社会体制の変化、そして戦争の世紀たる20世紀の到来、といった西欧の近・現代化の歴史的過程と常に寄り添いながらイメージの変容を遂げてきたものであることが看取できる。 そのような大掴みな理解をもって、これら300点にもおよぶ中世末期(15世紀半ば
九相詩絵巻 死体と向き合って生きてきた解剖学者の養老孟司(ようろう・たけし)さんが鎌倉時代の「九相詩絵巻」を紹介している。この絵巻には女性の死体が風化していく順に九相が描かれている。 一番上は生きていたときの女性の絵 二番目は死んだ直後、洗い清める湯灌をした後、生前身に着けていた着物をかぶせた絵 その後、死体が膨張し、腐敗し、鳥獣がついばみ、ついには白骨になる絵が描かれている。 養老さんは、中世の人たちが、日常生活で死体の九相をしっかり見る生活をしており、このリアルさが失われたのが江戸時代であると言っている。 現代人も、人間の死について目をそらさずに考えることによって、もっと大きな視野で生きていけるのではないでしょうか。 猛獣・猛禽の群れが集い、死体は噛み裂かれて食い荒らされる。 食い終わると、いっそう汚くくずれ果て、ただれるにまかせてしまうから、 幾千幾万と数知れぬ蛆(うじ)がその臭気を
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