川上さんはインタヴュアーとして、話題作『騎士団長殺し』(第1部 顕れるイデア編/第2部 遷ろうメタファー編、新潮社)にかんする問いを中心に、この国民的&世界的に支持されている小説家の志向を、とにかく広く、深くえぐろうとしている。 こんな〈死〉はイヤだ! 村上さんは、〈死にたいなって思ったこと〉は一度もないそうだ(310頁)。 村上さんの小説には超自然的なできごとが起こるものが多い。でも作者本人は超自然現象なんて信じていない(259頁)。 〈基本的には、死というのはただの無だろうと。でも、ただの無というのも、どんなものか見たことないからね〉(314頁)。 このあとに、村上さんの村上さんらしさが本書でもっとも凝縮された一節が続く── 〈村上 でも、実際に死んでみたら、死というのは、新幹線が岐阜羽島と米原のあいだで永遠に立ち往生するようなものだった、みたいなことになったらイヤだよね。駅もないし、