ギュッと自転車のブレーキを強く握り、眼下の長い坂を見つめる。 牛が草をはむ牧草地の間にある、200メートルも続く長い長い下り坂。 最初の150メートルは普通の傾斜だが、残りの50メートルが鬼傾斜だ。 ……いつ見ても凄ぇな。 これから自分が何をするつもりなのか考えると、寒気がして、サドルの上のキンタマが深い皺を刻んだ。 肛門が腹の真ん中辺りまでめり込むような気がする。逆脱肛だ。下手すりゃ、口から肛門が飛び出すぜ! 「こっ、この坂野郎」 じんわりと汗が滲む。 自然と荒くなる息を腹の底に押し返す。 怖いけど、怖くたって、関係ねぇ! 俺は人間様ッ! それに比べて、こいつはただの坂じゃねぇか! 無機物! しかもタンポポとかに割れ目作られてるし! ぷっ! ぷふっ、プスプスッ! ただのアスファルトって。 笑える! どっちが偉いかって言えばそんなもん、ど~考えたって、こ~考えたって、人間様だ! テメーなん
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