結構本気で落ち込んでいる。 「節分、今年はどうする?仕事で忙しかったら代わりにやっておこうか。」 我が家は父が生きていた時は父が、それから夫が、今は息子が豆を撒く。 近所では、子供はいても豆を撒く家はないので恥ずかしいのだが、やらないと落ち着かない。 そんなんじゃ鬼が逃げていかないぞと、亡き父が呆れそうな声で静かに「鬼は外」と呟くように唱え、お印だけという感じで数粒、ばら撒くというのが息子の代になってからのやり方だ。 「都合がつかないならいいよ、ちょろっとやっておくから」 自分からもうやめたいとは言いづらいだろうと、そう言った。 「いや、やるよ」 信心深いタチなので季節の決まり事も大事にしたがる方だが、それでも今年も自分がやるというのは意外であった。 「じゃあ、おばあちゃんには言わないでおくから、都合いい時間、降りてきてね」 「7時ごろかな」 あんまり早くから母のところに今年の豆撒きの予定