「人生は、勝つことだけじゃない」。吉田沙保里が、この夏のオリンピックを振り返る。聞き手を務めたのは、タレント、エッセイストとして活躍する小島慶子。次々飛び出す言葉のキャッチボールの中から、その孤高の強さの核に迫った。 リオオリンピック、あの決勝の、あの瞬間。 ──リオオリンピック、女子レスリング53kg級の決勝。あの銀メダルが決まった時、マットにつっぷしたあの吉田さんの姿をカメラが真上から捉えていました。吉田さんの記憶の中には、あの瞬間はどんなシーンとして残っているのでしょうか。 吉田沙保里(以下 吉田):あの時はただ「ああ、負けた……」と。4対1のまま追いつけず、最後はタックルに入ったけど、試合終了のブザーが鳴って。そのまま「ああ……」という感じだったので。 ──中継を拝見して、あらためて、アスリートの方ってとても過酷だなと思いました。私も人に見られる仕事をしていますけれども、大抵は見ら