カシュガルから、イェンギサール(英吉沙)県、ヤルカンド(莎車)県を経てポスカム(澤普)県へと向かう。タクラマカン砂漠の西辺を延々と車で進み続ける道だ。「砂漠」と言っても、月夜の下に黄色い砂丘が続くような一般的イメージとは異なり、小石や背の低い乾地性植物がポツポツと見られる荒野である。 こういう「草がまばらに生え,若干の動物が生息する荒れ地」のことをモンゴル語で「ゴビ」というらしい。事実、この辺りの自然はまさにゴビそのものだ。ゴビの砂は小麦粉やカタクリ粉みたいに粒子が細かく、踏みしめるごとに靴やズボンの裾にパウダーが纏わりつく。いざ砂嵐にでもなればメチャクチャ肺に悪そうである。 荒野の一本道を進んでいくと、ときおり現地のおっさんが車を停めさせて砂漠に飛び出し、トイレに駆け出す。自分もとりあえず試してみることにして、世界一雄大な立ちションをした。きっと往年の班超や玄奘も同じようにしていたに違い