寄稿・星野智幸さん 作家 このエッセーは、朝日新聞の編集委員から、安倍晋三元首相が亡くなって2年というテーマでインタビューの依頼を受けたことから始まった。2013年に私がこの欄に寄稿した「『宗教国家』日本」をもとに、この11年間を振り返りながら考えてほしい、と。 私は返信のメールで、次のようにお断りした。 ****(以下メール内容)**** (「『宗教国家』日本」を)久しぶりに読み直して、いまだに同じようなことを同じような語彙(ごい)で考えているなと確認しました。 ただ、変わったこともあって、これを書いたころの自分はまだ世の中を信頼していたんだな、と懐かしくも虚(むな)しく思いました。 現在のぼくは、政治や社会を語るこういった言葉が、単に消費されるだけで、分断されていくばかりの社会において、敵か味方かを判断する材料でしかなくなっていると感じています。「敵」と見なされれば攻撃の口実にされ、「